北海道
・伊藤整（1905～1969年）
詩人・翻訳・評論・小説家。渡島国松前郡炭焼沢村（現在の小樽市）生まれ。東京商科大中退。1926年、最初の詩集「雪明りの路」を自費出版。28年、同人詩誌「信夫翁」を創刊。29年、「文藝レビュー」を創刊。31年、永松定・辻野久憲との共訳「ユリシーズ」前編を刊行。32年、最初の評論集「新心理主義文学」を刊行。35年、後にその表現をめぐって裁判になるD・H・ロレンスの「チャタレイ夫人の恋人」を翻訳、刊行。詩・戯作・翻訳・評論そして小説まで幅広い創作活動を展開した。代表作に自伝的長編「若き詩人の肖像」はじめ、「鳴海仙吉」「花ひらく」「火の鳥」「小説の方法」「小説の認識」「変容」などがある。
・井上靖（1907～1991年）
小説家。京大文学部哲学科卒業後、毎日新聞社に入社。戦後になって多くの小説を手がけ、1949年「闘牛」で芥川賞受賞。51年、退社して以降は次々と名作を発表。「天平の甍」での芸術選奨（57年）、「おろしや国酔夢譚」での日本文芸賞（69年）、「孔子」での野間文芸賞（89年）など受賞作多数。76年文化勲章を受章した。
・子母沢寛（1892～1968年）
作家。明治大学法学部卒。当初の弁護士志望から、新聞社勤務を経て、1928年「新選組始末記」を処女出版。30年「笹川の繁蔵」で文壇デビュー。以後、「国定忠次」「駿河遊侠伝」などで股旅小説の草分けとなる。戦後は「勝海舟」「父子鷹」などの幕末小説を多く発表し、62年、菊池寛賞を受賞。
・渡辺淳一（1933～）
作家。札幌生まれ。札幌医大卒。医学博士。元札幌医大講師。「光と影」で直木賞を受賞。「麗しき白骨」「花埋み」「遠き落日」「女優」「うたかた」「化身」「くれない」「野わけ」「流氷への旅」「無影燈」「化粧」「ダブル・ハート」など医学、伝記、恋愛と様々なジャンルで著書多数。「失楽園」や「愛の流刑地」などは映画化され話題を呼んだ。1998年、札幌に「渡辺淳一文学館」が開設された。
青森県
・太宰治（1906～1948年）
小説家。本名は津島修治。日本浪漫派の作家として出発したが、戦後は虚無的退廃的な社会感覚を作品化。代表作は「斜陽」「人間失格」「桜桃」など。自殺した。
岩手県
・石川啄木（1885～1912年）
歌人。名は一（はじめ）。東京朝日新聞記者。与謝野夫妻に師事。社会思想に目覚め、和歌の革新を志した。歌集「一握の砂」「悲しき玩具」のほか、詩・小説・論文など。
・宮沢賢治（1896～1933年）
詩人・童話作家。花巻市の人。盛岡高農卒。早く法華経に帰依し、農業研究者・農村指導者として献身。また、多くの詩・童話を書き、詩「雨ニモマケズ」は一般的に広く知られ、童話「銀河鉄道の夜」「風の又三郎」なども有名。
秋田県
・小林多喜二（1903～1933年）
小説家。小樽高商卒。人道主義的な小説を書いたが、後にプロレタリア作家として、マルクス主義芸術理論を実践。官憲に逮捕され、拷問によって虐殺された。主な作品に「蟹工船」「不在地主」「工場細胞」「党生活者など」。
宮城県
・志賀直哉（1833～1971年）
小説家。東大中退。武者小路実篤らと雑誌「白樺」を創刊。強靭な個性による簡潔な文体は散文表現における一到達点を示した。代表作は「城の崎にて」「和解」「小説の神様」「暗夜行路」など。
・土井晩翠（1871～1952年）
詩人。本名は林吉。通称「どいばんすい」。東大卒。二高教授。詩集「天地有情（うじょう）」「晩鐘」のほか「イリアス」「オデュッセイア」の邦訳などがある。
山形県
・井上ひさし（1934～）
作家。上智大学フランス語科卒。放送作家を経て本格的な劇作活動に入り、「道元の冒険」で岸田戯曲賞および芸術選奨新人賞を受賞。小説にも手を染め、「手鎖心中」で直木賞を受賞した。戯曲の代表作に「しみじみ日本・乃木大将」「頭痛肩こり樋口一葉」、小説の代表作に「吉里吉里人」などがある。
・斎藤茂吉（1882～1953年）
歌人。東大医科出身。伊藤左千夫に師事。雑誌「アララギ」を編集。長崎医専教授として在外研究、のち青山脳病院長。作歌１万7000余り。「赤光」以下「つきかげ」に至る歌集17冊のほか、「柿本人麿」をはじめ評論・随筆も多い。
・藤沢周平（1927～1997年）
小説家。鶴岡市生まれ。山形師範学校卒。73年「暗殺の年輪」で第69回直木賞受賞。作家として世に出たのは40歳を過ぎてからで、一般的に考えればかなり遅いが、どれもがしっかりと練られた、膨大な数の作品を書き遺した。作品は剣客や藩士の登場する武家ものと、町人や渡世人を主人公とする市井ものとに書き分けられている。武家ものにおいては、架空の「海坂（うなさか）藩」をつくりだし、その環境・街並み・広さ（サイズ）まで細部にわたって決め、作り込んで表現している点が秀逸。主な作品は「用心棒日月抄」シリーズ、「蝉しぐれ」「風の果て」「たそがれ清兵衛」「闇の傀儡師」「三屋清左衛門残日録」「隠し剣孤影抄」「隠し剣秋風抄」「密謀」「市塵」「漆の実のみのる国」「よろずや平四郎活人剣」「獄医 立花登手控え」シリーズ、「回天の門」「逆軍の旗」「海鳴り」「本所しぐれ町物語」「橋ものがたり」「彫師 伊之助捕物覚え」シリーズ、「暁のひかり」「花のあと」「時雨みち」「玄鳥」「霧の朝」「一茶」「白き瓶 小説 長塚節」など多数
・丸谷才一（1925～）
小説家・文芸評論家。鶴岡市生まれ。小説、評論、随筆に翻訳と活躍は幅が広く、著書に「たった一人の反乱」「女ざかり」、短編「横しぐれ」、評論「文章読本」「忠臣蔵とは何か」、随筆「男のポケット」など多数。
福島県
・中山義秀（1900～1969）
作家。早稲田大学英文科卒。教員生活を続けるかたわら、創作活動に励む。38年に「厚物咲（あつものざき）」で芥川賞を受賞。以後、「碑」「テニヤンの末日」などを発表。戦後は歴史小説に目を向け、「信夫の鷹」「咲庵（しょうあん）」「芭蕉庵桃青」などがある。
・横光利一（1898～1947年）
小説家。早稲田大学中退。川端康成とともに、新感覚派運動を展開し、次いで新心理主義文学に移った。主な作品に「日輪」「機械」「紋章」「旅愁」などがある。
新潟県
・会津八一（1881～1956年）
歌人・書家。早大卒。母校で英文学・東洋美術史を講義した。歌集に「鹿鳴集」などがあり、万葉風を近代化した独自な歌風を確立した。
・坂口安吾（1906～1955年）
小説家。本名は炳吾。東洋大学卒。「吹雪物語」など観念的な作風で知られ、戦後、在来の形式、道徳に反抗して「堕落論」を唱えた。代表作は「白痴」、評論「日本文化私観」など。
・良寛（1758～1831年）
歌人・江戸後期の禅僧。俗名は山本栄蔵。号は大愚。諸国行脚の後、帰郷して国上山の五合庵に住む。性恬淡。村童を友とし、高潔の人格を敬仰された。書で知られ、また漢詩・和歌に優れた。弟子・貞心尼編の歌集「蓮の露」などがある。
茨城県
・長塚節（1875～1915）
歌人・小説家。正岡子規に和歌を学び、根岸派の重鎮として伊藤左千夫と併称され、また写生文をよくし、小説「土」によって農民文学を確立した。
栃木県
・山手樹一郎（1899～1978年）
作家。1916年、明治中学校卒業。27年、博文館に入社し、のち「譚海」編集長。33年「一年余日」でサンデー毎日大衆文芸賞の佳作に入選。40年、出世作「桃太郎侍」を地方紙に連載。戦後は「夢介千両みやげ」など“山手調”の明るい感覚によって一時代を画した。
群馬県
・田山花袋（1871～1930年）
小説家。名は録弥。館林の生まれ。明治40年「蒲団」を発表して自然主義文学に一時期を画し、赤裸々な現実描写を主張した。主な著作に「生」「妻」「田舎教師」「時は過ぎ行く」「一兵卒の銃殺」などがある。
・萩原朔太郎（1886～1942年）
詩人。前橋市生まれ。感情詩社を起こし、口語自由詩を芸術的に完成して新風を樹立。詩集「月に吠える」「青猫」、詩論集「新しき欲情」「虚妄の正義」など。
千葉県
・国木田独歩（1871～1908年）
詩人・小説家。名は哲夫。明治39年、短編集「運命」を刊行し、自然主義文学の先駆として世評を高くした。主な作品に「牛肉と馬鈴薯」「武蔵野」「酒中日記」などがある。
・伊藤左千夫（1864～1913年）
歌人。明治33年、正岡子規の門に入り、子規没後、「馬酔木（あしび）」「アララギ」などを発刊。子規の写生主義を強調。歌風は万葉調。門下に島木赤彦、斎藤茂吉などを出し、写生文の小説にも長じていた。歌集・歌論集のほか、小説「野菊の墓」などがある。
東京都
・芥川龍之介（1892～1927年）
作家。夏目漱石門下。菊地寛・久米正雄らと第三・四次「新思潮」を刊行。「鼻」「芋粥」で注目された。代表作は「地獄変」「羅生門」「河童」「歯車」「ある阿呆の一生」など。自殺した。
・有島武郎（1878～1923年）
小説家。有島生馬・里見弴（とん）の兄。「白樺」の同人。人道主義的傾向が強く、思想的苦悩の結果、財産を放棄。代表作「宣言」「或る女」「カインの末裔」。自殺した。
・池波正太郎（1923～1990年）
作家。浅草生まれ。下谷・西町小学校卒業。劇作家から小説家となり、60年「錯乱」で直木賞を受賞。以後「鬼平犯科帳」「剣客商売」「仕掛人 藤枝梅安」の三大時代小説シリーズを中心に活躍。77年には吉川英治文学賞を受賞。
・遠藤周作（1923～）
小説家。純文学からユーモア小説まで幅広い作品を発表。さらに随筆や対談などでも活躍した。95年文化勲章を受賞。主な著書に「海と毒薬」「沈黙」「侍」「イエスの生涯」「孤狸庵閑話」「おバカさん」「深い河」など多数。
・大岡昇平（1909～1988年）
作家。京都大学仏文科卒。敗戦後、小林秀雄の勧めで「俘虜記」を執筆。代表作に、フランス心理小説の手法によるベストセラー小説「武蔵野夫人」や戦争文学「野火」、さらには歴史小説「天誅組」や「レイテ戦記」がある。評論に「中原中也」「常識的文学論」など。
・尾崎紅葉（1867～1903年）
小説家。硯友社の代表作家。名は徳太郎。明治18年、山田美妙斎とともに硯友社を起こし「我楽多文庫」を創刊。明治文壇の雄として偉業を遺し、泉鏡花、徳田秋声らの逸材を出した。代表作は「二人比丘尼懺悔」「多情多恨」「金色夜叉」など。
・蒲原有明（1875～1952年）
詩人。本名は隼雄。東京麹町（現在の千代田区）生まれ。処女詩集は「草わかば」。象徴派に属し、薄田泣菫と併称された。ロセッティ・ブレークの訳詩のほか、「独絃哀歌」「春鳥」「有明集」「有明諸集」などがある。
・幸田露伴（1867～1947年）
小説家。本名は成行（しげゆき）。別号は蝸牛庵。明治22年「風流仏」などを発表。理想主義的傾向を持つ擬古典派に属し、尾崎紅葉と並び称された。主な作品に小説「五重塔」「運命」「連環記」、史伝「頼朝」、戯曲「名和長年」、長編詩集「出盧」などがある。
・塩野七生（1937～）
作家。学習院大学文学部哲学科卒業後、63～68年までイタリアに遊学。70年、再度イタリアに渡り、現在に至る。フィレンツェ在住。70年「チェーザレ・ボルジア あるいは優雅なる冷酷」で毎日出版文化賞、81年「海の都の物語」でサントリー学芸賞、82年これまでの著作活動に対し菊池寛賞をそれぞれ受賞。88年「わが友マキアヴェッリ」で女流文学賞受賞。他に「ルネサンスの女たち」「神の代理人」「コンスタンティノープルの陥落」「ロードス島攻防」「レパントの海戦」、殺人事件シリーズ「緋色のベネツィア」「銀色のフィレンツェ」「黄金のローマ」など多数。また、ライフワークとして長編「ローマ人の物語」がある。
・杉本苑子（1925～）
作家。文化学院卒。63年「孤愁の岸」で第48回直木賞受賞。78年「滝沢馬琴」で吉川英治文学賞。86年「穢土荘厳」で女流文学賞を受賞。代表的著書に「華の碑文」「玉川兄弟」「埋み火」「終焉」「影の系譜」「散華」「天智帝をめぐる七人」「私家版 かげろふ日記」「平家物語を歩く」「檀林皇后私譜」「絵島疑獄」「残照」「決断のとき」「二条の后」「悲劇の風雲児」「埠頭の風」などがある。
・高杉良（1939～）
作家。化学関係の専門紙記者時代の75年「虚構の城」でデビューし、以後、企業小説・経済小説を次々に発表する。作品は「小説 日本興業銀行」「大合併」「鮮やかな退任」「会社蘇生」「懲戒解雇」「人事権！」「濁流」「挑戦つきることなし」「辞表撤回」「首魁の宴」「局長罷免 小説通産省」「小説 消費者金融」「生命燃ゆ」「対決」「炎の経営者」「管理者降格」「破滅への疾走」「青年社長」「明日はわが身」など。バブル経済が弾けて金融機関の多額の不良債権が発生、その処理に公的資金が導入される過程で、同氏が描いた大手金融機関を舞台にした「金融腐蝕列島」「金融腐蝕列島呪縛」「金融腐蝕列島 再生」は大きな話題となり、映画化もされた。
・高村光太郎（1883～1956年）
詩人・彫刻家。彫刻家・高村光雲の子。東京美術学校卒後、米・仏に留学してロダンに傾倒。帰国後、「スバル」同人、耽美的な詩風から理想主義に転じ、「道程」で生命感と倫理的意志のあふれた格調の高い口語自由詩完成した。他に、「智恵子抄」「典型」「ロダンの言葉」など。
・武田泰淳（1912～）
作家。東大支那文学科中退。竹内好らと中国文学研究会を創設、処女作「司馬遷」は昭和文学屈指の評論となる。代表作に「風媒花」「ひかりごけ」「富士」「快楽（けらく）」（日本文学大賞受賞）など黙示録的なスケールで人間存在の根本を問う重厚な作品を残した。
・立原道造（1914～1939年）
詩人。東大建築科卒。「四季」同人。堀辰雄やリルケに傾倒し、繊細・純粋で、音楽的な抒情詩を書いた詩集「萱草（わすれぐさ）に寄す」「暁と夕の詩」。
・富田常雄（1904～1967年）
小説家。父常次郎は講道館四天王の一人に数えられた著名な柔道家。明治大学商学部卒。学生時代から詩、小説、戯曲などを書き始めるが、一般に知られるようになるのは42年の「姿三四郎」の出版から。明治20年代の前後の世相を背景に柔道一筋に生きる青年を描いたこの長編は、戦中戦後を通して変わらない人気を得た。49年「刺青」「面」で直木賞を受賞。他に「弁慶」「柔」などの話題作がある。
・谷川俊太郎（1931～）
詩人。信濃町で生まれる。48年、北川幸比古ら友人の影響で詩作を始め、11月ガリ版刷りの詩誌「金平糖」に２篇の８行詩を掲載。50年「蛍雪時代」や「学窓」などに作品を投稿。「文学界」に「ネロ他５篇」が父の友人の三好達治の紹介で掲載。52年、初めての詩集「二十億光年の孤独」を刊行。主な作品に「六十二のソネット」「愛について」「愛のパンセ」「世界へ！」「あなたに」「２１」「地球へのピクニック」「ことばあそびうた」「わらべうた」「みみをすます」「アダムとイブの対話」などがある。
・谷崎潤一郎（1886～1965年）
小説家・劇作家。東大中退。第二次「新思潮」同人。「刺青（しせい）」「少年」
など、耽美と背徳の空想的な世界を華麗に描いたが、大正後期から日本的な
伝統美に傾倒し、王朝文学の息吹きを現代に生かした新しい境地を開いた。
代表作に「蓼喰ふ虫」「春琴抄」「細雪」「少将滋幹の母」などがある。
・辻邦生（1925～1999年）
作家。57年から61年までフランスに留学。63年、長編「廻廊にて」を上梓し、近代文学賞を受賞。この後、芸術選奨新人賞を得た。68年の「安土往還記」や72年に毎日芸術賞を受けた「背教者ユリアヌス」など、独自の歴史小説を次々と発表。95年には「西行花伝」により谷崎潤一郎賞受賞。他に「嵯峨野明月記」「春の戴冠」などがある。
・中里介山（1885～1944年）
小説家。本名は弥之助。仏教思想を根幹として、独自の風格を持つ大衆文学の先駆。代表作に「大菩薩峠」などがある。
・中島敦（1909～1942年）
小説家。東大卒。中国を背景とする作品が多い。代表作に「光と風と夢」「李陵」「山月記」などがある。
・童門冬二（1927～）
小説家・評論家。44年に海軍土浦航空隊に入隊するが翌年終戦。戦後は東京都庁に勤務。広報室長、企画調整局長、政策室長などを歴任し、79年退職。退庁後は歴史小説やエッセイを執筆。主な著書に「小説 上杉鷹山」「北の王国」「近江商人魂」「小説 河井継之助」「海の街道」「伊能忠敬」「渋沢栄一」「小説 伊藤博文」「中江藤樹」「山田方谷」「平将門」「小説 二宮金次郎」「小説 横井小楠」「小説 海舟独言」「小説 蒲生氏郷」「国僧 日蓮」など多数。
・永井荷風（1879～1959年）
小説家。本名は壮吉。広津柳浪に師事。「地獄の花」などでゾラを紹介したが、明治40年代、耽美享楽の作風に転じた。同時代文明への嫌悪を語りながら、江戸戯作の世界に隠れ花柳界など下層狭斜の風俗を描いた。主な作品に「あめりか物語」「すみだ川」「腕くらべ」「おかめ笹」「墨東綺譚」、日記「断腸亭日乗」などがある。
・永井路子（1935～）
小説家。東京女子大学国語専攻部卒。小学館勤務を経て文筆業に入る。64年「炎環」で第52回直木賞受賞。82年「氷輪」で女流文学賞受賞。84年、第32回菊池寛賞受賞。88年「雲と風と」で吉川英治文学賞を受賞。主な著書に「源頼朝の世界」「波のかたみ 清盛の妻」「北条政子」「朱なる十字架」「美貌の大帝」「茜さす」「この世をば」「噂の皇子」「裸足の皇女」「山霧」「王朝序曲」「悪霊列伝」「時宗の決断」「望みしは何ぞ」「絵巻」など多数。
・中村真一郎（1918～）
小説家・文芸評論家。小説、詩、評論の分野から演劇、翻訳の分野まで多彩に活躍。主な著書に「死の影の下に」「空中庭園」「頼山陽とその時代」「蠣崎波響の生涯」「四季」四部作など。
・夏目漱石（1869～1916年）
英文学者・小説家。名は金之助。東大卒。五高教授。明治33年英国に留学、帰国後東大講師。のち朝日新聞社に入社。38年「吾輩は猫である」、次いで「倫敦塔」を出して文壇の地歩を確保。代表作は他に「虞美人草」「坊ちゃん」「草枕」「三四郎」「それから」「門」「彼岸過ぎ迄」「行人」「心」「道草」「明暗」など。
・南原幹雄（1938～）
作家。早稲田大学政治経済学部卒。「女絵地獄」で小説現代新人賞。「闇と影の百年戦争」で吉川英治文学新人賞を受賞。代表作に「北の黙示録」「暗殺剣」「謀将 山本勘助」「御三家の反逆」「徳川御三卿」「銭五の海」「抜け荷百万石」「百万石太平記」「幕府隠密帳」「天下の旗に叛いて」「灼熱の要塞」「吉原大尽舞」などがある。
・樋口一葉（1872～1896年）
小説家。名は夏子。半井（なからい）桃水に師事。のちに「文学界」同人と親交。代表作は「たけくらべ」「にごりえ」「十三夜」など。
・平岩弓枝（1932～）
作家。日本女子大学国文科卒。古典芸能・古典文学の素養を生かして分泌活動を続け、59年「鏨師（たがねし）」で直木賞を受賞。以後、現代小説、時代小説、推理小説と多岐にわたる創作活動を展開。「御宿かわせみ」シリーズは時代物の代表作に挙げられる。
・舟橋聖一（1904～1976年）
戯曲・小説家。東大国文科卒。在学中から劇団心座の結成に参加し、戯曲を書いて上演する。卒業後、明治大学講師となり、戯曲集「愛慾の一匙」を処女出版。小説にも手を染め、雑誌「文学界」に発表した「木石」「母代」などによって、作家としての評価を確立する。戦後、「ある女の遠景」で毎日芸術賞受賞。代表作に「雪夫人絵図」「花の生涯」「絵島生島」「芸者小夏」「お市御寮人」「とりかへばや秘文」「真贋の記」などがある。
・堀辰雄（1904～1953年）
小説家。芥川龍之介・室生犀星に師事。日本的風土に近代フランスの知性を定着させ、独自の作風を造形した。主な作品に「聖家族」「風立ちぬ」「幼年時代」「菜穂子」などがある。
・村上元三（1910～）
作家。41年「上総風土記」により第12回直木賞受賞。主な著書に「佐々木小次郎」「次郎長三国志」「田沼意次」「水戸黄門」「加賀騒動」「源義経」「加藤清正」「水戸光圀」「平賀源内」「岩崎弥太郎」などがある。
・吉村昭（1927～2006年）
小説家。学習院大学中退。66年「星への旅」で太宰治賞受賞。73年、その一連のドキュメント作品により菊池寛賞受賞。79年「ふぉん・しいほるとの娘」で吉川英治文学賞受賞。85年「冷い夏、熱い夏」で毎日芸術賞受賞。「破獄」で読売文学賞受賞。代表作に「戦艦武蔵」「冬の鷹」「長英逃亡」「桜田門外の変」「ニコライ遭難」「海の史劇」「日本医家伝」「間宮林蔵」「海の祭礼」「ポーツマスの旗」「白い航跡」「黒船」「花渡る海」「雪の花」など多数。
・三好徹（1931～）
小説家。本名は河上雄三。旧制横浜高商（現横浜国大）卒。読売新聞社記者のかたわら小説を発表。68年「聖少女」で第58回直木賞受賞。ミステリー、歴史小説、現代小説、ノンフィクションなど幅広い分野で活躍。代表作に「天馬の如く」「興亡と夢」「沖田総司」「土方歳三」「板垣退助」「徳川慶喜」「明治に名参謀ありて」「日本宰相伝」シリーズ、「政商伝」「へんくつ一代」「高杉晋作」「近代ジャーナリスト列伝」など多数。
神奈川県
・北村透谷（1868～1894年）
詩人・評論家。名は門太郎。小田原生まれ。明治26年、島崎藤村らと雑誌「文学界」を中心に活動した。近代浪漫主義の先駆者。自殺した。
・吉川英治（1892～1962年）
作家。父の事業の失敗で小学校を中退、職業を転々としながら懸賞小説などに応募。東京毎夕新聞社勤務を経て本格的な創作活動に入り、「鳴門秘帖」「神州天馬侠」などの成功で大衆作家としての地歩を固める。「宮本武蔵」「新・平家物語」などの大河小説は、国民文学として圧倒的な支持を受けた。60年、文化勲章を受章した。
山梨県
・山本周五郎（1903～1967年）
作家。26年、「須磨寺附近」が「文藝春秋」に掲載され、文壇出世作となった。「小説 日本婦道記」が43年上期の直木賞に推されたが、受賞を固辞。58年、大作「樅の木は残った」を完成。以後、「赤ひげ診療譚」（58年）、「青べか物語」（60年）、「五辨の椿」「大飯介始末」「日日平安」「さぶ」「虚空遍歴」「おさん」「正雪記」「ながい坂」「栄花物語」「天地静大」「松風の門」「ちいさこべ」「人情裏長屋」「花杖記」「あんちゃん」「彦左衛門外記」「風流太平記」「夜明けの辻」「髪かざり」「人情武士道」「風雲海南記」など多数。
長野県
・窪田空穂（1877～1967年）
歌人・国文学者。名は通治。早大教授。歌風は客観性を重んじて生活実感を歌い上げ、抒情性に富む。歌集「まひる野」「鳥声集」「老槻の下」、代表的著書に「万葉集評釈」「古今和歌集評釈」など。
・小林一茶（1763～1827年）
江戸後期の俳人。通称弥太郎、名は信之。信濃国柏原生まれ。14歳のとき江戸へ出て、俳諧を二六（にろく）庵竹阿に学んだ。俗語・方言を使いこなし、不幸な体験からにじみ出た主観的・個性的な句で知られる。晩年は郷里で逆境のうちに死んだ。主な作品に「おらが春」「みとり日記」「七番日記」「我春集」などがある。
・島木赤彦（1876～1926年）
歌人。本名は久保田俊彦。諏訪の人。明治36年雑誌「比牟呂」を創刊。伊藤左千夫に師事。斎藤茂吉・古泉千樫とともに「アララギ」を編集。写生主義に立脚し、実相観入と万葉調とを強調。代表的作品は「歌道小見」「万葉集の鑑賞及び其の批評」など。
・島崎藤村（1872～1943年）
詩人・作家。本名は春樹。明治学院出身。詩集「若菜集」などでロマン主義的詩風を示す。小説「破戒」によって作家の地位を確立。自然主義文学の先駆。「春」「家」「新生」「嵐」などはいずれも自伝的作品。「夜明け前」は畢生の大作。「幼きものへ」「ふるさと」などの童話もある。
・新田次郎（1912～1980年）
作家。上諏訪生まれ。無線電信講習所（現在の電気通信大学）を卒業後、中央気象台に就職、富士山測候所勤務などを経験する。56年「強力（ごうりき）伝」で直木賞を受賞。「孤高の人」「八甲田山死の彷徨」など山岳小説の分野を拓く。次いで歴史小説にも力を注ぎ、74年「武田信玄」などで吉川英治賞を受賞。このほか、「アラスカ物語」「小笠原始末記」などがある。没後、その遺志により「新田次郎文学賞」が設けられた。
静岡県
・大岡信（1931～）
詩人・文芸評論家。三島市生まれ。詩、戯曲、評論などの分野で活躍。著書は詩集「記憶と現在」「春 少女に」、評論「紀貫之」、詩歌集「折々のうた」など多数。
・木下杢太郎（1885～1945年）
医学者・詩人・劇作家。本名は大田正雄。東大教授。北原白秋と「スバル」「屋上庭園」を発刊。キリシタン・美術史の研究にも多くの業績を残した。詩集「食後の唄」、戯曲「和泉屋染物店」など。
愛知県
・井沢元彦（1954～）
作家。早稲田大学法学部卒。80年「猿丸幻視行」で第26回江戸川乱歩賞を受賞。「本廟寺焼亡」で推理文壇に独自の地位を築く。代表作に「逆説の日本史」シリーズ、「忠臣蔵 元禄十五年の反逆」「義経はここにいる」「義経幻殺録」「織田信長推理帳」シリーズ、「芭蕉魔星陣」「光と影の武蔵 切支丹秘録」「ダビデの星の暗号」「六歌仙暗殺考」「修道士の首」「暗鬼」「天皇になろうとした将軍」「日本史叛逆者 私説壬申の乱」「GEN 源氏物語秘録」「信玄の呪縛」「卑弥呼伝説」「歴史不思議物語」などがある。
・城山三郎（1927～2007年）
小説家。海軍特別幹部候補生で終戦を迎える。46年東京商科大学（現一橋大）入学。卒業後、愛知学芸大学で景気論を講義するかたわら書いた小説「輸出」
で文学界新人賞を受賞。59年「総会屋錦城」で第40回直木賞を受賞。他に「小説日本銀行」「落日燃ゆ」「粗にして野だが卑ではない」「もう君には頼まない」「男子の本懐」「辛酸」「鼠」「野生のひとびと」「大義の末」「冬の派閥」「雄気堂々」「秀吉と武吉」「男たちの経営」「気張る男」「風雲に乗る」「成算あり」「外食王の飢え」「梅は匂い 人はこころ」「燃えるだけ燃えよ」「ビッグボーイの生涯」「わしの眼は十年先が見える 大原孫三郎の生涯」「黄金の日日」「毎日が日曜日」「創意に生きる－中京財界史－」「午前八時の男たち トップが語る強い企業の秘密」「打たれ強く生きる」「乗っ取り」など多数。
・連城三紀彦（1948～）
作家。名古屋市生まれ。早稲田大学政経学部卒。78年「変調二人羽織」で幻影城新人賞。81年「戻り川心中」で日本推理作家協会賞。84年「宵待草夜情」で吉川英治文学新人賞、同年「恋文」で第91回直木賞をそれぞれ受賞。著書に「暗色コメディ」「密やかな喪服」「瓦斯灯」「夕萩心中」「離婚しない女」「残紅」「花堕ちる」「蛍草」などがある。
石川県
・泉鏡花（1873～1939年）
小説家。名は鏡太郎。金沢市の人。尾崎紅葉に師事。明治・大正・昭和を通じて浪漫主義文学に独自の境地を開いた。代表作は「夜行巡査」「照葉狂言」「高野聖」「歌行燈」など。彼の作品は「婦系図」をはじめ、しばしば新派劇に上演。
・杉本久英（1921～）
作家。七尾市生まれ。東大国文科卒。「文藝」編集長を経て文筆生活に入る。「天才と狂人の間」で直木賞を受賞。以後、「辻政信」「啄木の悲しき生涯」「苦悩の旗手太宰治」「近衛文麿」（毎日出版文化賞受賞）などの傑作評伝を発表。93年、菊池寛賞を受賞。他に長編「天皇の料理番」はじめ「明治天皇」「美酒一代 鳥井信治郎伝」などがある。
・室生犀星（1889～1962年）
詩人・小説家。本名は照道。金沢市生まれ。高等小学中退。北原白秋・萩原朔太郎らと交わり、抒情詩人として知られた。後、小説に転じ、野生的な人間追求と感覚的描写で一家を成す。代表作は「愛の詩集」「幼年時代」「あにいもうと」「杏っ子」など。
福井県
・大島昌宏（1934～）
作家。日本大学芸術学部映画学科卒業後、広告制作会社に勤務し、多くのテレビCMを手がける。92年「九頭竜川」で第11回新田次郎文学賞を、94年「罪なくして斬らる」で第３回中山義秀文学賞を受賞。著書は他に「そろばん武士道」「北の海鳴り」「結城秀康」「炎の如く」などがある。
三重県
・丹羽文雄（1904～）
作家。三重県四日市、浄土真宗の末寺に生まれる。早稲田大学卒。32年の大学在学中より執筆した小説が尾崎一雄から認められ、「鮎が「文芸春秋」に発表されて出世作になった。代表作に「青麦」「菩提樹」「一路」（読売文学賞）、「親鸞」（５巻）、「無慚無愧」「蓮如」（８巻、野間文芸賞）、「ひと我を非情の作家と呼ぶ」「わが母、わが友、わが人生」などがある。文化勲章受章。
京都府
・村上春樹（1949～）
作家。早稲田大学文学部卒。76年「風の歌を聴け」でデビュー、群像新人賞受賞。主な作品に「羊をめぐる冒険」（野間文芸新人賞）、「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド」（谷崎潤一郎賞受賞）、「ねじまきクロニクル」（読売文学賞）、「ノルウェイの森」「アンダーグラウンド」「スプートニクの恋人」「海辺のカフカ」など多数。
・山崎正和（1934～）
劇作家・評論家。京都市生まれ。大阪大学文学部教授を経て東亜大学大学院教授。多くの戯曲を発表する他に、芸術論から文明批評まで多彩な分野で活躍した。著書は「世阿弥」「鷗外 闘う家長」「病み上がりのあめりか」「柔らかい個人主義の誕生」など多数。
・与謝野寛（1873～1935年）
詩人・歌人。初め鉄幹と号す。晶子の夫。落合直文に学び、浅香社・東京新詩社の創立、「明星」の刊行に尽力。新派和歌運動に貢献。自社の詩を主張。詩歌集「東西南北」「天地玄黄」、歌集「相聞」など。
大阪府
・織田作之助（1913～1947年）
作家。大阪生まれ。高校中退後、青山光二らと発刊していた同人誌「海風」に作品を発表。改造社の第一回文芸推薦作品となった「夫婦善哉」が出世作。代表作に「青春の逆説」「六白金星」「土曜夫人」など。評論に「可能性の文学」があり、伝統文学への決別を表明した。
・開高健（1930～1989年）
作家。天王寺生まれ。大阪市立大学在学中、様々な職業に就き、卒業後、寿屋（現サントリー）の雑誌「洋酒天国」を編集。57年「パニック」「巨人と玩具」「裸の王様」を発表。翌年、第38回芥川賞を受賞。人間の原点と社会の組織に目を向け、現代社会と取り組むエネルギッシュな作家的姿勢を一貫して保った。主な作品に「日本三文オペラ」「流亡記」「ロビンソンの末裔」「ヴェトナム戦記」などがある。
・川端康成（1899～1972年）
小説家。東大卒。横光利一らと新感覚派運動を展開、やがて独自の地歩を築く。代表作に「伊豆の踊り子」「雪国」「千羽鶴」「山の音」などがある。文化勲章・ノーベル文学賞を受賞。自殺した。
・黒岩重吾（1924～2006年）
小説家。同志社大学卒業後、様々な職業遍歴後、60年「休日の断崖」で文壇に登場。「背徳のメス」で第44回直木賞を受賞。著書には一連の古代史を題材にした作品が多い。代表作は80年に第14回吉川英治文学賞を受賞した、壬申の乱を大海人皇子サイドから捉えた長編「天の川の太陽」ほか、「紅蓮の女王 小説 推古女帝」「天翔る白日 大津皇子」「落日の王子 蘇我入鹿」「聖徳太子 日と影の王子」「斑鳩王の慟哭」「茜に燃ゆ」「北風に起つ 継体戦争と蘇我稲目」「岩舟の光芒 物部守屋と蘇我馬子」「天風の彩王 藤原不比等」「鬼道の女王 卑弥呼」「弓削道鏡」など多数。
・五味康祐（1921～1980年）
作家。大阪難波生まれ。早稲田大学英文科中退。学徒出陣し、復員後、各種の職業を転々とした後、「喪神」により52年、芥川賞を受賞。以後、時代小説作家として、剣豪小説のブームを作る。「柳生武芸帳」「二人の武蔵」「一刀斎は背番号６」など作品多数。
・堺屋太一（1935～）
作家。本名は池口小太郎。60年、東大経済学部卒業後、通商産業省に入省。日本万国博を企画、開催。沖縄海洋博やサンシャイン計画にも携わった。78年、工業技術院研究開発官を最後に退官。以来、テレビ、新聞、雑誌などで幅広い創作・評論活動をしている。著書に第一次ベビーブーム世代（1947～49年生まれ）の名付け親ともなった「団塊の世代」はじめ「油断！」「巨いなる企て」「峠の群像」「三脱三創」「歴史からの発想」「峠から日本が見える」「豊臣秀長」「組織の盛衰」「『新都』建設」などがある。
・司馬遼太郎（1923～1996年）
作家。大阪外国語学校蒙古語科卒。60年「梟の城」で第42回直木賞受賞。66年「竜馬がゆく」「国盗り物語」で菊池寛賞受賞。72年「世に棲む日日」を中心にした作家活動で吉川英治文学賞受賞。76年日本芸術院恩賜賞受賞。
82年「ひとびとの足音」で読売文学賞受賞。84年「街道をゆく 南蛮のみちⅠ」で日本文学大賞受賞。87年「ロシアについて」で読売文学賞受賞。88年「韃靼疾風禄」で大仏次郎賞受賞。93年、文化勲章受賞。このほか代表作に「燃えよ剣」「坂の上の雲」「菜の花の沖」「峠」「花神」「胡蝶の夢」「播磨灘物語」「箱根の坂」「翔ぶが如く」「項羽と劉邦」「功名が辻」「夏草の賦」「歳月」「妖怪」「幕末」「最後の将軍」「北斗の人」「王城の護衛者」「アームストロング砲」「尻喰らえ孫市」「空海の風景」「酔って候」「歴史を紀行する」「八人との対話」、そして「街道をゆく」シリーズなどがある。96年２月12日、10年間続いた『文芸春秋』の巻頭随筆「この国のかたち」は著者の死をもって未完のまま終わることになった。
・高村薫（1953～）
作家。大阪市東住吉区生まれ。同志社高校を経て、国際基督教大学教養学部仏文専攻を卒業。専門商社退職後の90年、「黄金を抱いて翔べ」で日本推理サスペンス大賞を受けデビュー。93年「リヴィエラを撃て」で日本推理作家協会賞。「マークスの山」で第109回直木賞を受賞。97年「レディ・ジョーカー」を発表。従来のミステリーの枠組みを超えた骨太で斬新、重厚な作品を生み続けている。他に「神の火」「地を這う虫」など。
・田辺聖子（1928～）
小説・評論・随筆家。47年、樟蔭女子専門学校国文科卒。放送作家などを経て、「感傷旅行（センチメンタル・ジャーニー）」で64年、第50回芥川賞を受賞。以後、軽妙洒脱でユーモラスな小説を主体に、歴史エッセイ、評論、随筆など幅広い活動をしている人気作家。著書は「千すじの黒髪 わが愛の與謝野晶子」「甘い関係」「女の長風呂」「猫も杓子も」「求婚旅行」「ああカモカのおっちゃん」「男はころり 女はころり」「私本・源氏物語」など多数。
・直木三十五（1891～1934年）
作家。早稲田大学英文科中退。美術記者、編集者、評論家、コラムニストを経て、29年「由比根元大殺記」で作家として認められる。「南国太平記」が代表作。菊池寛はその友情から35年、芥川賞とともに直木三十五賞を設定した。
・山崎豊子（1924～）
作家。京都女子大国文科卒。毎日新聞社学芸部に勤務。当時、学芸部副部長だった井上靖のもとで記者としての訓練を受ける。勤務のかたわら、小説を書き始め、57年「暖簾」を刊行。翌年「花のれん」により直木賞を受賞。新聞社を退社して作家活動に入る。63年より連載を始めた「白い巨塔」は鋭い社会性で話題を呼んだ。「不毛地帯」「二つの祖国」「大地の子」の戦争三部作の後、大作「沈まぬ太陽」を発表。91年、菊池寛賞を受賞。
・三好達治（1900～1964年）
詩人・随筆家。陸士中退後、東大卒。「詩と詩論」の新誌運動に参加。のち堀辰雄らと「四季」を創刊。知性と感性の調和した抒情詩を完成。詩集「測量船」「南竃集（なんそうしゅう）」「一点鐘」、随筆集「路傍の秋」などがある。
・与謝野晶子（1878～1942年）
歌人。堺市の人。寛の妻。旧姓は鳳。新詩社に加わり、雑誌「明星」で活躍。日露戦争中、「明星」に発表された長詩「君死にたまふことなかれ」は、文壇はもとより、社会的に極めて大きな衝撃を与えた。代表作は歌集「みだれ髪」「佐保姫」「春泥集」のほか、「新訳源氏物語」など。
・与謝蕪村（1716～1783年）
江戸中期の俳人・画家。摂津（現在のそれぞれ大阪府・兵庫県の一部）生ま れ。本姓は谷口。後に改姓。別号は宰鳥・夜半亭など。幼い時から絵に長じ、文人画で大成するかたわら、早野巴人（はじん）に俳諧を学び、正風の中興を唱え、感性的・浪漫的俳風を生み出し、芭蕉と併称される。主な著書に「新花摘」「玉藻集」など。俳文・俳句は後に「蕪村句集」「蕪村翁文集」がある。
兵庫県
・石原慎太郎（1932～）
作家・政治家。神戸市生まれ。一橋大学卒。56年、「太陽の季節」で芥川賞を受賞。主な著書に「亀裂」「完全な遊戯」「化石の森」（芸術選奨文部大臣賞）、「光より速きわれら」「生還」（平林たい子賞）、ミリオンセラーとなった「弟」など多数。
・佐藤雅美（1941～）
作家。兵庫県生まれ。早稲田大学法学部卒。会社勤務を経て、68年よりフリーに。84年、処女作「大君の通貨」で第４回新田次郎文学賞受賞。71年「恵比寿屋喜兵衛手控え」で第110回直木賞受賞。主な著書に「主殿の税 田沼意次の経済改革」「幕末『住友』参謀 広瀬宰平の経営戦略」「官僚 川路聖あきらの生涯」「影帳 半次郎捕物控」「物書同心居眠り紋蔵」「開国 愚直の宰相・堀田正睦」などがある。
・三木露風（1889～1964）
詩人・歌人。本名は操。明治40年、相馬御風らと早稲田詩社を結成。「白き手の猟人」で冥想的・神秘的な象徴詩を完成した。他に「廃園」「幻の田園」など。
・宮本輝（1947～）
作家。追手門学院大学文学部卒。77年「泥の河」で第13回太宰治賞を、78年「蛍川」で第78回芥川賞を受賞。87年「優駿」で第21回吉川英治文学賞を受賞。主な作品に「彗星物語」「海辺の扉」「朝の歓び」「雨の降る午後」「避暑地の猫」「ここに地終わり ここに海始まる」「睡蓮の長いまどろみ」「海岸列車」「草原の椅子」「人間の幸福」「星々の悲しみ」「道頓堀川」「錦繍」「青が散る」「流転の海」「ドナウの旅人」「愉楽の園」「オレンジの壺」「焚き火の終わり」「月光の東」「夢見通りの人々」「私たちがすきだったこと」「春の夢」「葡萄と郷愁」、対談集に「道行く人たちと」「メイン・テーマ」などがある。
和歌山県
・神坂次郎（1929～）
作家。82年「黒潮の岸辺」で日本文芸大賞、87年「縛られた巨人－南方熊楠の生涯」で大衆文学研究賞を受賞。このほか主な著書に「元禄御畳奉行の日記」「男いっぴき物語」「今日われ生きてあり」「今昔おかね物語」「男 この言葉」などがある。
・佐藤春夫（1892～1964年）
詩人・小説家。慶応大学中退。与謝野鉄幹・永井荷風に師事。「殉情詩集」など古典的な格調の抒情詩で知られたが、のち小説に転じ、幻想的・耽美的な作風を拓いた。小説の代表作に「田園の憂鬱」「都会の憂鬱」「女誠扇綺譚」などがある。
・津本陽（1929～）
作家。東北大学法学部卒。同人誌「VIKING」に発表した「深重の海」で78年に直木賞を受賞。以後、社会派小説、歴史小説などで幅広く活躍、「明治撃剣会」「薩南示現流」で剣豪小説の新境地を開拓、新剣豪小説の担い手となる。「黄金の海へ」「春風無刀流」「波上の館」「海商 岩橋万造の生涯」「火焔浄土 顕如上人伝」「柳生兵庫助」「下天は夢か」「創神 織田信長」「信長公記」「修羅街道」「気骨の人」「巨人伝」「開国」など、長編も多数。
岡山県
・柴田錬三郎（1917～1978年）
作家。本姓は斎藤。慶応大学文学部卒。在学中、「三田文学」に処女作「十円紙幣」を発表。戦後、編集者生活を経て、51年「イエスの裔（すえ）」で直木賞受賞。代表作に「眠狂四郎無頼控」「赤い影法師」「曲者時代」「徳川三国志」など多数。
・薄田泣菫（1877～1945年）
詩人。本名は淳介。象徴派詩人として、明治文学史上、島崎藤村、土井晩翠に次ぎ、薄田泣菫、蒲原有明時代をつくる。代表的詩集は「ゆく春」「二十五絃」「白羊宮」「暮笛（ぼてき）集」など。
広島県
・阿川弘之（1920～）
作家。東京帝国大学国文科卒。文化功労者。海軍大尉として復員後、志賀直哉に師事。著作「志賀直哉」で毎日出版文化賞と野間文芸賞を受賞。1999年文化勲章を受章。代表作に「山本五十六」「米内光政」「井上茂美」「軍艦長門の生涯」「春の城」「雲の墓標」「暗い波濤」などがある。
・井伏鱒二（1898～1993年）
作家。広島県深安郡で生まれる。本名は満寿二（いぶしますじ）。1919年、早稲田大学文学部仏文科一年のとき「ありじごく」「幽閉」などを書いたのが文筆業のスタート。38年「風来漂流民奇譚ジョン萬次郎漂流記」およびユーモア小説により第６回直木賞受賞。以後、「さざなみ軍記」「遥拝隊長」、50年「本日休診」（第１回読売文学賞受賞）、66年、第26回文化勲章受章、「黒い雨」で第19回野間文芸賞受賞、72年「早稲田の森」で読売文学賞受賞。
島根県
・森鷗外（1862～1922年）
作家。名は林太郎。島根県の人。東大医科出身。軍医となり、ヨーロッパ留学。陸軍軍医総監。帝室博物館長。文芸に造詣深く、「しがらみ草紙」を創刊。かたわら西欧（ドイツ）文学の紹介・翻訳、創作・批評を行い、明治文壇の重鎮。主な作品は「於母影」「舞姫」「雁」「阿倍一族」「渋江抽斎」、翻訳は「即興詩人」「ファウスト」など。
山口県
・種田山頭火（1882～1940年）
俳人。現在の防府市生まれ。近在屈指の大地主の長男として生まれるが、９歳のとき母親が自殺。以後、徐々に家は没落。1902年、早稲田大学・大学部文学科に第一回生として入学するが、04年、神経衰弱で退学。家運とともに、やがて不幸の淵に沈んでいく。25年、出家得度、耕畝と改名。26年から流転の旅に出て、九州から東北まで漂泊托鉢。行乞生活を記録した句は数奇な生涯を凝縮し秀逸。
・中原中也（1907～1937年）
詩人。山口県の人。叙情的で透明な独自の詩境を開いた。代表的詩集は「山羊の歌」「在りし日の歌」など。
徳島県
・瀬戸内寂聴（1922～）
作家・評論家。東京女子大卒。瀬戸内晴美の筆名で幅広い創作活動。73年、得度し法名・寂聴。京都・嵯峨野に寂庵を結ぶ。87年、岩手・天台寺住職に。97年、文化功労賞ほか受賞多数。主な著書に「愛と祈りを」「いのち華やぐ」「まどう」「いよよ華やぐ」「いのち発見」などがある。
愛媛県
・大江健三郎（1935～）
小説家。東大文学部仏文科卒。在学中に執筆した「奇妙な仕事」で注目を集め、57年「死者の奢り」で文壇レビュー。翌年「飼育」で芥川賞受賞。石原慎太郎、開高健とともに新世代の旗手的存在となる。「個人的な体験」「万延元年のフットボール」「厳粛な綱渡り」などで、絶えず現代文学の可能性を切り開き、その成果は国際的にも高く評価され、94年ノーベル文学賞受賞。2005年、作家生活50周年を記念して「大江健三郎賞」創設を発表。
・河東碧梧桐（1873～1937年）
俳人。名は秉五郎。松山市の人。正岡子規の俳句革新運動を助け、その没後、高浜虚子と俳壇の双璧を形成した。新傾向の句風を宣揚。「海紅」「碧」「三昧」を刊行。
・高浜虚子（1874～1959年）
俳人・小説家。本名は清。伊予松山生まれ。三高中退。正岡子規に師事。「ホトトギス」を主宰して花鳥諷詠の客観写生を説いた。「五百句」「虚子俳話」など。また、「俳諧師」「風流懺法」など写生文の小説でも知られた。
・正岡子規（1869～1902年）
俳人・歌人。松山市の人。名は常規。別号は獺祭（だっさい）書屋主人・竹の里人。日本新聞社に入り、俳諧を研究。雑誌「ホトトギス」に拠って写生俳句・写生文を首唱。また「歌よみに与ふる書」を発表して短歌革新を試み、新体詩・小説にも筆を染める。その句を日本派、和歌を根岸派という。
香川県
・菊池寛（1888～1948年）
作家。本名はヒロシと読む。京大英文科卒。芥川龍之介、久米正雄らと第三次・四次「新思潮」を発刊。「無名作家の日記」「忠直卿行状記」「恩讐の彼方に」、戯曲「父帰る」「藤十郎の恋」などを発表。また、雑誌「文芸春秋」を創刊、作家の育成、文芸の普及に貢献した。
高知県
・大町桂月（1869～1925年）
国文学者。名は芳衛。東大卒。叙事・紀行・修養などについての文章を数多く発表。明治文壇に大きな影響を与えた。
福岡県
・五木寛之（1932～）
作家。「蒼ざめた馬を見よ」で第56回直木賞を受賞。「青春の門」で吉川英治文学賞受賞。81年より休筆、京都・龍谷大学で仏教を学び、85年から執筆を再開した。第一エッセイ集「風に吹かれて」は刊行から30余年を経て450万部以上に達するロングセラーとなっている。主な著書に「燃えよ秋」「生きるヒント」「他力」「蓮如 聖俗具有の人間像」ほか、訳書に「かもめのジョナサン」など。
・小島直記（1919～）
作家。八女市生まれ。東大経済学部卒。海軍主計大尉で終戦。66年、ブリヂストンを退社し、ペン一本となる。「まかり通る」などの伝記小説や「出世を急がぬ男たち」「逆境を愛する男たち」「老いに挫けぬ男たち」などの“男たち”シリーズが評判を呼ぶ。主な著書に「人材水脈 日本近代化の主役と裏方」「東京海上ロンドン支店」「三井物産初代社長」「日本策士伝」「福沢山脈」「小説 三井物産」「エンジン一代 山岡孫吉伝」「野村王国を築いた男 奥村綱男のトコトン人生」「創業者 石橋正二郎」など多数。
・真木洋三（1926～）
作家。気象大学校を卒業後、１年間気象台に勤務。51年九州大学経済学部卒。同年読売新聞社に入社。社会部記者を経て、福岡放送営業部長として出向のあと読売新聞に復帰し、81年退社。著書に「出向を命ず」「流人」「五代友厚」「小説 銀行管理」「東郷平八郎」など多数。
・松本清張（1909～1992年）
小説家。推理小説、時代小説、政治小説、ノンフィクションの幅広い分野で多くの話題作を発表する。また、古代史、現代史の分野でも、独自の視点で大胆な仮説を打ち出すなど幅広く活躍した。著書に「点と線」「砂の器」「日本の黒い霧」「黄色い風土」「ガラスの城」「風紋」「黒い樹海」「落差」「棲息分布」「殺人行おくのほそ道」「湖底の光芒」「邪馬台国 清張通史①」「空白の世紀 清張通史②」「カミと青銅の迷路 清張通史③」「天皇と豪族 清張通史④」「壬申の乱 清張通史⑤」「古代の終焉 清張通史⑥」など多数。
佐賀県
・北方謙三（1947～）
作家。中央大学卒。71年に「明るい街へ」でデビュー。81年の「弔鐘はるかなり」で脚光を浴び、翌年「眠りなき夜」で日本冒険小説協会大賞、吉川英治文学新人賞受賞。84年に「檻」で日本冒険小説協会大賞、「渇きの街」で日本推理作家協会賞を受賞。88年から歴史小説にも挑み、91年の「破軍の星」で柴田錬三郎賞受賞・主な作品に「武王の門」「陽炎の旗」「林蔵の貌」などがある。
長崎県
・村上龍（1952～）
作家。76年「限りなく透明に近いブルー」で第75回芥川賞を受賞。「コインロッカー・ベイビーズ」で野間文芸新人賞受賞。「村上龍映画小説集」で平林たい子賞受賞。また「トパーズ」「KYOKO」などで映画監督。「ワイン一杯だけの真実」など著書多数。
宮崎県
・若山牧水（1885～1928年）
歌人。本名は繁。尾上柴舟（さいしゅう）の門下。平易純情な浪漫的作風で旅と酒の歌が多い。歌誌「創作」を主宰。
熊本県
・徳富蘇峰（1863～1957年）
評論家。名は猪一郎。同志社中退。明治20年、民友社設立、「国民の友」「国民新聞」を発行。初め自由主義的政論を発表したが、日清戦争以後、国粋主義の鼓吹者となる。大正期以後は修史事業を志し、「近世日本国民史」を執筆した。
・徳富蘆花（1868～1927年）
小説家。名は健次郎。蘇峰の弟。同志社中退。「不如帰」「自然と人生」によって文壇に独自の地位を占めた。トルストイに心酔して社会的視野を持つ作品を書き、晩年はキリスト者として田園生活を送る。主な著作は「思い出の記」「黒い眼と茶色の目」「みみずのたはこと」など。
鹿児島県
・海音寺潮五郎（1901～1977年）
作家。国学院大学卒業後、指宿や京都で中学校教師を務めるかたわら創作活動に励む。「サンデー毎日」大衆文芸賞受賞を機に、執筆活動に入る。36年「天正女合戦」で第３回直木賞を受賞し、文名を不動のものとした。和漢の書にあまねく通じ、緻密な時代考証のうえに独自の史観を展開し、小説、随筆に新たな領域を開き、多くの著作を残した。代表作に「天と地と」「西郷と大久保」「江戸開城」「乱世の英雄」「武将列伝」「二本の銀杏」「悪人列伝」「幕末動乱の男たち」「平将門」「蒙古来たる」「赤穂浪士伝」「寺田屋騒動」「史伝 西郷隆盛」などがある。
＜国外で出生＞
・早乙女貢（1926～）
作家。中国・ハルピン生まれ。慶応大学中退。早くからクラブ雑誌の書き手として活躍し、68年「撟人の檻」で直木賞を受賞。「血槍三代」「北条早雲」「独眼流政宗」「おけい」「沖田総司」と、戦国・幕末の歴史時代小説が多い。曽祖父以来の会津藩士の血を受け継ぎ、「会津士魂」（全13巻）を完成した。89年、吉川英治文学賞を受賞した。
・白石一郎（1931～）
作家。韓国・釜山生まれ。早稲田大学卒。87年「海狼伝」で第97回直木賞受賞。92年「戦鬼たちの海 織田水軍の将・九鬼嘉隆」で第５回柴田錬三郎賞、98年、海洋文学対象特別賞を受賞。99年「怒涛のごとく」で吉川英治文学賞受賞。主な作品に「海王伝」「異人館」「航海者」「天翔ける女」などがある。
・網淵謙錠（1924～）
作家。樺太・登富津で生まれる。43年、東大文学部英文科卒業後、中央公論社に入社し、出版部、中央公論・婦人公論編集部を経て、71年退社。日本ペンクラブ事務局長のかたわら、「斬」を執筆。72年、同作品で第67回直木賞を受賞した。著書に「苔」「狄」「幻」「戊辰落日」「越後太平記」「航」「殺」「剣」「幕末に生きる」「島津斉彬」などがある。